【研修報告】精神保健福祉士全国大会(6月)
今回のブログは少し長めです。そして固い内容かもしれません。
研修報告なのであしからずご了承ください。
「全国」の「精神保健福祉士」が集まる大会。
そんな集まりが6月にありました。報告が遅くなりましたが、報告する意味があると思い掲載します。
病院の専門職と言えば何を連想されますか?
医師、看護師、理学療法士、作業療法士、放射線技師、臨床心理士、、、、、
実は、その中に「精神保健福祉士」もしくは「ソーシャルワーカー」というのがあります。
「ん?精神保健福祉士??」と思われたかたも多いのではないでしょうか。
精神保健福祉士は、「社会福祉学を学問的基盤として、精神障害者の抱える生活問題や社会問題の解決のための援助や、社会参加に向けての支援活動を通して、その人らしいライフスタイルの獲得を目標」とした専門職種です(精神保健福祉士協会の言葉を引用)。そして国家資格です。
1950年代ころから精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)という名称で精神科医療機関を中心に医療チームの一員として導入され、けっこう昔から活動している職種です。と言いましても今は精神障害者だけでなく、メンタルヘルス全般を対象に幅広くあくせく動いています。(たとえば災害対策、自殺予防、スクールカウンセリング、職業支援、、、いっぱい)
働く職場も、病院やクリニックだけではなく、保健所や県庁といった公的機関から学校、障害者の福祉事業所、大学、刑務所、株式会社・・・など様々な場所で活躍しています。
参照ページ 日本精神保健福祉士協会 http://www.japsw.or.jp/psw/
ももたにクリニックには2名、精神保健福祉士の資格を持ったスタッフが働いています。
ちなみに和歌山の精神科病院ならだいたい精神保健福祉士はいます。
精神科クリニック(診療所)は、いるところいないところがあります(必置ではないので)。
前置きが長くなりましたが、6月19~21日に精神保健福祉士が全国から集う大会(学会)が埼玉で開催されました。そこにPSWの峰政が参加し、精神保健福祉の「なう」な話を仕入れ、全国からの猛者と出会って研鑽してきました。全国から1,224名の参加者がありました。和歌山からも20名程の方が参加されていました。
大会テーマは「我が国の精神保健医療福祉のMerkmalを求めて〜精神保健福祉士の存在意義を問う〜」でした。
Merkmal(メルクマール)とは、設定した目標設定に達する過程の中間指標や目印で、目標に対する進捗の指標のことです。
日本精神保健福祉士協会の前身である日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会が設立されて今年で50年。その歴史の振り返るとともに今後10年間で精神保健福祉士が目指すべき、到達点を見据えるという想いがこもめられています。
全国大会は①プレ企画、②全国大会(基調講演や総会)、③研究発表といったことが行われます。
日本の精神障害者の福祉は、なかなか手厳しいもので、治療の必要性がなくなっても長期に入院させられた人がたくさんいらっしゃる状況が歴史的経過の中で作られました。過去に比べて、改善はされつつありますが、未だに全てが解消されたわけではありません。
近年でも20万人以上の方が一年以上の長期入院をされています(一般病院だと長くても3か月で退院することが多いです)。そのうち15万人近い人が65歳以上で、その半数が75歳以上と言われています。そういう方々の中には、数十年にわたって入院されている方も少なくありません。(たとえば、20代から定年を迎えるまで病院で生活している人も。想像してみるとすごいことです。) そういった現状は度々メディアでも取り上げられています。
http://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/700/188176.html
そんな現状の中、今回の全国大会で私が気になったトピックは2つです。
一つ目は「精神科病棟転換型住居」のことです。
簡単にいえば、「今使っている病棟を、生活の場に変えて支えましょう」ということです。
病棟に住む・・・このことについて「看板の掛け替え」だとか、「ごまかし」だと批判が高まっています。
協会内では、意見がわかれていました。
ひとつは、真っ向から反対する意見。誰もが地域で生活することを支えるのが精神保健福祉士ならば、基本的に看板を建て替えて「退院しました」というのはごまかしだ!と反対する意見。
そしてもうひとつは、原則は反対するが、しかし現状をみると何十年も病棟でくらして生活力を奪われ、なおかつ高齢の方が、いまから地域で生活する支援は、間に合うのか?可能なのか?それを考えると本人たちの充実した生活を少しでも実現させるための苦渋の判断では。といもの。
総会でもこれに関して意見が飛び交い、熱き議論が行われました。
両者の意見は両方納得できました。反対意見を持ちつつ、いざ、目の前にいる人をどう支えていくか。
自分自身が問われました。
もう一つドキッとしたのが、基調講演での柏木名誉会長の言葉。「精神保健福祉士が資格化されてソーシャルワーカーがいなくなった」というものです。
資格化される前は、社会資源がない中でいろいろな資源やネットワークをソーシャルワーカーが作り活動してきた実状があります。それが精神科ソーシャルワーカーが精神保健福祉士として資格化されることで、「資格」があるという安心感で、「ソーシャル」ワーカーなのに「社会」へとびだしていくことをしなくなったのでは・・・というご指摘。もちろん、すべての精神保健福祉士がそういうわけではないです。
しかし、その言葉をきき、私自身が「まちのクリニック」と表している職場で働いていくなかで、ガツン!と響きました。
いかに、地域に根差しているか、そういった活動ができているか。びびび!っと刺激を受けました。
他にも学会発表ではいろいろな報告や発表があり、学ぶことの多い3日間となりました。例えば、「弁護士を病院に招いての無料相談の実施」「地域住民を含めた病院主催の勉強会」などがありました。これらは、地域根差した取り組みといえるでしょう。目指すべき取り組みの形の一つかもしれません。
また、他県のPSWとつながれたことは、大きな成果でした。大会後も資料を送っていただいたり、有益な情報を提供していただいたりと、継続的な関係ができまいた。
3日間という長くて短い日程でしたが、本当に価値ある日々でした。
今後は、得られた成果を活かし、ももたにクリニックにいらっしゃる皆様のご支援に少しでも活かせるよう努力していきます。
以上、大変長くなりましたが、全国大会の報告とさせていただきます。
記事:峰政